9月某日、成年後見制度について勉強会があり、そこで講師としてお話する機会がありました。
成年後見制度の知名度向上と正しい理解の促進に、少しでもお役に立てるなら。
年に数回、いろんな方からお声をかけていただき、本当に光栄なことです。
私はホントに先生なんて柄ではないし、他人様の前でお話できるほどではないと思うのですが…。
勉強会では、制度の手続きの流れや、後見人ができること・できないこと、さまざまなケース事例、後見の課題などについて、私の知っている限りのことをお話しました。
参加者数は、全部で15名くらいだったかな。
まだまだ知名度が低い成年後見制度の勉強会に、わざわざ参加して学ぼうと思った方々です。
勉強会の最後には、参加者からの質問に答える、質疑応答の時間が設けられていました。
自分に身近な問題として捉えていて、具体的な質問が多かったという印象でした。
今回は、その時の質疑応答で、私の記憶に残っているものを3つほど記したいと思います。
ご本人の意思
Q1 手術する・しないを決めることは、後見人はできない = 親族の役割であるとされていますが、親族が一人もいない時は、どうしたらよいのでしょうか?
A1 事前に、ご本人と支援者と後見人で話し合い、決めておくことが望ましいと思います。
被後見人が高齢で施設に入所される時は、施設側としても、そういった問題への対応を決めておくために、あらかじめ書面で定めておくことがほとんどです。
何より大切なのは、ご本人の意思を尊重することです。それが後見制度の理念ですから。
しかし、類型が後見の場合は、ご本人の意思表示が難しいことがあります。
さらに、年齢や健康状態、預貯金の残高、その他の条件を踏まえることも必要です。
一律での正解をズバッと示せれば最高なのですが、ケースバイケースで対応せざるを得ない、というのが現実的な回答になってしまいます。
個人的には、医師の診断や見立てを基にして、苦痛を緩和するための措置は受け入れるが、無意味な延命措置はしない、というのが基本的な考え方です。
追加選任
Q2 親族が後見人をしていますが、その人が後見人の仕事をできなくなった時は、どうしたらよいのでしょうか?
A2 実は、後見人は追加選任することができます。
被後見人1人に対して後見人は1人しかなれない、というルールはありません。
ですので、家庭裁判所に必要性を認めてもらうことが前提となりますが、2人以上の後見人がいてもよいのです。
具体的に「○○さんにお願いしたい」という候補者となる方がいれば、候補者事情説明書を作成し、その人の住民票を取得し、家庭裁判所の追加選任の申立をすることにより、面談などの必要な手続きを経たうえで、追加決定されます。
具体的な候補者がいない場合は、家庭裁判所に一任となりますが、その場合、どんな人が選任されるかはわからず、どんな人に決まったとしても不服を申し立てることはできません。(現時点の制度上では。)
取消権
Q3 在宅で1人で生活している被後見人が、後見人の知らないうちに、誰かにだまされて高額な契約をした場合は、どうしたらよいのでしょうか?
A3 まず前提として、後見人が承知しておらず、同意していない契約は無効です。
もしすでに契約をしていた場合は、まず書面を確認、状況を整理し、家庭裁判所に報告します。
そして必要に応じて、取消権を行使します。
取消権とは、文字通り、一度してしまった契約を取り消すことです。
(私は取消権を行使したことがないので、実例のお話はできません。)
被後見人が在宅の場合は、だまされて契約をしていないか、すぐに確認できる態勢が必要でしょう。
例えば、少なくとも月に1回以上とか、週に1回とか、必要な頻度で訪問して、生活の様子をお聞きしながら、なにか心配な封書や書面などがないか、確認することが望ましいです。
そして、そもそもの話になってしまいますが、理解力・判断力のない方が、在宅で1人での生活を継続することは、かなり困難です。
よって、本人と親族と支援者(ケアマネさんや生活相談員さんなど)を交えて話し合うことが前提ですが、施設に入所して生活した方が安全、というケースが多いものと思われます。
被後見人が安心して生活できる環境を整えることも、後見人の大切な役割です。
結びに
実は2年前にも同じ会場で、同じように講師をさせてもらったことがあります。
2年前といえば、独立してまだ1年ちょっとのころです。
(そんな私に、よく講師なんて依頼しようと思ったな、と他人事ながら。)
そして、もしかしたら2年前の自分だったら、今回のような質問が出た時、ハッキリとお答えすることはできなかった、かもしれません。
手前味噌ではありますが、今は独立してから丸3年以上が経ちまして、自分なりにさまざまな経験をしてきたからこそ、今回のような回答ができた、ような気がしています。
大人になってからは誰かが誉めてくれることなんてマズないので、今回は自分で自分のことをちょっとだけ誉めてやりましたw
自分の知識・経験値こそが、自分にとってかけがえのない武器であり、他人様に提供できる有益なサービス・商品になっている、と実感しています。
たかが2年、されど2年。
今後も、自分のペースで、ゆっくりと、しかし着実に、日々、精進したいと思います。
今日が人生で一番若い日です、からね。
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