成年後見制度とは?④ ~よくある質問、後見人等の報酬のこと等~

成年後見制度

これまで制度の概要と申立の方法について、お話しました。

今回は、私がご本人や家族に制度の説明をする際に、よく受ける4つの質問を、まとめてみました。

「知るって大事ですよ。」繰り返し何度もお伝えしている言葉ですが、知ることで不安が減り、不安が減ることで適切な行動ができるようになります。

家族でもない人に通帳等を預けるのは、心配です…。

答え: 後見人等の仕事内容は、家庭裁判所がチェックする仕組みになっています。

成年後見人制度は、法律で決まっている国の制度ですので、後見人等は、1年に1回、ご本人について支援したことの事務報告書や財産目録等を作って、必ず家庭裁判所に報告しなければなりません。

報告をしなかったり、報告に不明な点があれば、家庭裁判所から説明を求められたり、注意を受けることがあります。悪質な場合は、後見人等を解任されたり、罪に問われることもあります。

当たり前過ぎて、あらためて言うほどのことではないかも知れませんが、後見人等は「他人の大切な財産を預かっている」という気持ちで、慎重に仕事をしなければなりません。

後見人等が決まると、お金を自由に使えないのでは…。

答え: まったく自由に使えないということは、ありません。

たまに「お金を自由に使えなくなってしまった」という、成年後見制度の問題点を指摘する利用者の声、みたいな記事を見かけることがあります。

そもそも「ご本人に金銭管理能力が乏しい」ために後見人等をつけるわけですし、類型が後見の場合は、本人の判断力がないので、ほとんどのことを後見人が代理としてやることが多いかもしれません。

しかし、制度本来の目的は、「本人の残っている能力を活かし、足りないところを後見人等から助けてもらいましょう」という趣旨です。

ですので、制度を利用されているご本人とそのご家族や支援者、そして後見人等がお互いにコミュニケーションをとり、相談しながらお金の使い道を決めることが、大切だと考えています。

当然、入ってくるお金には限りがありますので、まずは家賃や施設利用料、水道光熱通信費、税金等の必要な支払いをしたうえで、残ったお金の中から、食費等の生活費の金額を決めます。

入ってくるお金に余裕のある方は、お小遣いは1か月いくら、と決めてその範囲内で自由に使うこともできるでしょう。

でも、不要な買い物を繰り返せば、お金はすぐに無くなってしまいます。後見人等が「本当に必要なものか?」を考えて、不要と思われる高額な買い物には「待った」をかける場合があります。

この点が「お金が自由に使えなくなった。」という声の原因になるのかな、とは思います。

「すでに買ってしまった。」という場合は、後見人等が「取消権」を行使し、契約を「なかったことにしてもらう。」場合もあります。高額の金額の目安は、10万円以上の場合です。

私は今のところ取消権を行使したことは、ありません。

ただ、「後見人等に取消権がある。」とは言っても、何でもかんでも取り消せるわけではありません。日常的な買い物の範囲では取消権が発動されることはありません。例えば、「パン1個買ったけど、それはムダ遣いなので、取り消します。」なんてことはありませんので、安心してください。

お金がなくなってご本人の生活が困ったことにならないように、適切に財産を管理するのが、後見人等の大切な仕事なのです。

後見人等への報酬が必要だって聞くけど…。

答え: 預貯金等が少ない人の場合、目安は月額2万円です。市町村による助成制度が使える場合があります。

「預貯金等が少ない人」の金額の目安は、約1,000万円未満です。1,000万円を超えると金額に応じて、報酬月額が3~6万円となることがありますが、これは家庭裁判所の判断によります。

先ほど、「後見人等は、約1年ごとに仕事内容を家庭裁判所に報告する」とお話しました。その報告時に一緒に「報酬付与申立」を行うことにより、家庭裁判所が仕事の内容やご本人の財産状況等を考慮し、報酬額が決定されます。

後見人等が「たくさん支援したんだから、これくらいもらってもいいよね。」と、勝手に報酬額を決めて、勝手に報酬をもらうことは、できません。絶対にしてはいけません。それは、守るべき本人の財産を減らした業務上横領という犯罪です。

報酬金額を決めるには、家庭裁判所による審判が必要なのです。

報酬は、支援を受けている人の預貯金の中から、後見人等に支払います。

「でも、お金に余裕がありません。」という人は、一定の条件(※)を満たせば、【成年後見制度利用支援事業】の助成を受けることができます。

※一定の条件とは、例えば、ひとり世帯の場合、年間合計収入が、150万円以内であり、かつ、資産の合計額が、350万円以内であることが条件、等のように各自治体ごとにルールが異なりますので、確認が必要です。

一度、後見人等が決まると止められないって…。

答え: 原則としては、止めることはできません。ただし…

医師に診断してもらい、「ご本人は、能力が回復したので、成年後見は必要ありません。」という診断書をもらい、家庭裁判所に申立をして認められれば、止めることはできます。でも、実際にはほぼあり得ないケースだと思われます。

「一度、決まると止められない。」という点は、今の成年後見制度の問題点として指摘されています。ですので、例えば、今後、制度変更が検討されて「必要な時に必要な場面だけ利用できる。」といった柔軟な運用ができるようになれば、利用者数は増えるかも知れません。ただ、そういった変更が今後されるのかどうかはまだわかりませんし、現実は現行制度で動くしかありません。

現時点でできることは、繰り返しになるかもしれませんが、あらかじめ制度について知っておき、十分納得したうえで利用することが大切だと思います。

まとめ

後見人等の仕事内容は、1年に1回、家庭裁判所がチェックする仕組みになっており、後見人等が報告しなかった場合等は、注意を受けたり後見人等を解任されることがあります。

後見人等は、ご本人の収入を把握し、まずは家賃・水道光熱通信費・税金等の必要な支払いを行います。収入がどれくらいあるかは、人それぞれですので、食費やお小遣いをたくさんもらえる人もいれば、もらう余裕のない人もいます。

後見人等への報酬は、目安は月額2万円ですが、預貯金が少ない人の場合、一定の条件を満たせば、市町村からの助成を受けることができます。

一度、後見人等が決まると、原則、止めることはできませんが、医師に診断書により、「後見人等は不要」と判断されれば、止めることができます。

当ブログでは、わかりやすく問題解決につながるコンテンツを目指しておりますので、随時、加筆・修正しております。「ここを詳しく」等のご意見をコメント欄にお寄せくださると嬉しいです。

今回も最後までお読みいただきまして、本当にありがとうございました~。

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