当然、起こり得ること

10月某日、私が支援していた被補助人の方が、病気のため、入院先の病院にて永眠しました。

10月に誕生日を迎え、80才になられたばかりでした。

どんな人だったのか? 故人への親しみを込めて言えば、

「なかなかの いんごじさ (頑固な おじいちゃん) でしたねぇ」 って感じです。

入院する前から少し体調がわるそうだったのですが、入所先の施設の職員さんが「早めに受診した方がいいよ」って勧めても、なかなか言うことを聞いてくれなかったんですよね。

施設のベッドから起き上がるのが難しいくらいになってから、ようやく診療所を受診して、その結果、隣町の大きな病院に救急搬送されることになってしまいました。

類型は補助ですので、ある程度、自分の意思や希望を他人に伝えることができます。

入院した直後、ご本人の意識もハッキリしていたので、医師からご本人に対して「万が一、心肺停止などになった時は、心臓マッサージや気管挿管などの延命処置を希望しますか?」とのことを確認された時、「そんなの やらないでいい」とキッパリ断ったそうです。

医師からの説明では「若いころに喫煙の習慣があった様子で、もともとの肺の機能が落ちている」「本当は呼吸器の酸素濃度を上げたいが、今以上に上げると逆効果になる。負担になり過ぎない程度に、現状維持の処置しかできない」とのことでした。

この状況で、私ができること、補助人としてやるべきことは、何か?

まずは、家庭裁判所への連絡票です。

現状の報告(ご本人が入院したこと、危篤状態であること、親族はいるがあまり協力的ではないこと、など)と、今後の方針(死後の手続き、支払いに関すること、など)について、家裁に相談しました。

そのうえで、「補助人として認められた権限を逸脱しないように」「ご親族と無用なトラブルにならないように、特に金銭管理には注意を」など、家裁から助言を受け、慎重に対応することにしました。

ご本人の生命や財産に関わる重要なことは、できる限り、事前に家裁へ報告しておいた方がよいでしょう。 自分自身の安心感にもつながります。 初めてやることには、やはり心配がありますから。

入院してから程なく、約1週間後に安らかに旅立たれました。

「後見を仕事とする」と決めた時から「その人の最期に関与する」ことは意識していました。

この仕事を始めて4年目にして、初めてその現場に立ち会うことになったのです。

後見という重要な役目をしている以上、【当然、起こり得ること】なのです。

入院の手続き、死亡届への記入(届出人の欄は、協力できる親族がいなかったため、病院長の名前で)、火葬場への納棺の立会い(ご遺族が遺骨の受取りを拒否されたので、ご遺族から遺骨を残さない同意書へのサインをもらったうえで、収骨はしませんでした。火葬場の能力や市町村のルールの違いによって、できる・できないがあるようです)、施設退去の手続き(お部屋の片付けを業者に依頼したり、亡くなった日までの利用料の支払い)、東京法務局へ登記抹消の手続き、法定相続人への引継報告書の作成、家庭裁判所への事務終了報告、など。

いや、ホントに初めてのことばかりで、全てが貴重な経験知になりました。

生きる = 常に学び ですね。

あらためてお世話になった施設の職員さんにあいさつに行った時「ご親族の関係は残念でしたけど、ご本人は潔くって、いかにも らしい 最期でしたねぇ」なんてお話をしたりもしました。 湿っぽい話ばっかりしたって、喜ばないでしょうし。

今、私がやっているお仕事は「自分で金銭管理や契約ごとなど、いろいろとやれなくなって、親族にも頼ることができないような人が増えている社会環境下にあって、面倒なことを積極的にやろう・あるいは、やれるという人が少ない中で、私にはたまたま知識と経験とやる気があるので、社会的に認められた適正な報酬をいただけるのなら、自分の役割として仕事としてやってみようかなと思い、やっているのだ」と、自分なりに咀嚼(そしゃく = 細かくかみ砕いて理解)しています。

ただ、それだけのことなのです。

いろんな思いはありますけど。

あんまりね、考え過ぎちゃっても、よくないですし。

なにより、自分が行動できなくなっちゃいますし。

結局、万人にとっての正解なんか、ありませんし。

今ある現状で、今ある制度・法律で、今ある自分のやれること・やる気の範囲内で。

自分が 「できると思った、やってみたらできた、これからもやってやろう」 って。

それが 「売り手良し、買い手良し、世間良し」 の三方良しにつながる、と思いながら。

今日も、動きます。

今までありがとう、という気持ちと。

自分の健康資産を大事にしよう、という気持ちと。

周りの人に感謝しよう、という気持ちと。

自分に今、できることをお手伝いしよう、という気持ちと。

初めての経験をして、そんなことをしみじみと考えました、とさ。

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