成年後見の現場② 知的障害×借金1千万円!

成年後見制度

今回は、前回のKさんに負けず劣らず、いろいろな事件が盛りだくさん、Nさんのケースについてお話します。

Nさん

2020(令和2)年ころ、当時47才の女性、療育手帳Bをお持ちのNさんという方がいました。

30代のころは、県外で一人暮らしをしていたこともあった、とのことです。

しかし、父が高齢になったため、2010(平成22)年ころに実家に戻り、家業の手伝いや障害者の作業所に通ったりして、生活されていました。

きっかけ ~ 警察沙汰 ~ 入院

Nさんを支援することになったきっかけは、ご本人の父の成年後見申立でした。

ご本人の父は、ご病気のために入院して、すでに金銭管理などが困難な状態でした。

Nさん自身にも理解力・判断力に難があるため、「父に成年後見人をつけましょう。」ということを支援者の皆さんと話し合いをして決め、申立に必要な資料作成・整理を支援したのです。

そして、なんやかんやあって無事に父の成年後見人が決まった、と思いきや、今度はNさんが大事件を起こしてしまいます。

なんと「G県T市で警察に保護された。」とのこと。

第一報を民生委員さんから聞いた時、頭の中が「???」となったことを覚えています。

「なんでいきなり?」 「警察?」 「しかも県外?」

父の入院や成年後見の手続きなどで、いつもと違うことがたくさん起こっていたので、精神的にいろいろ不安定になってしまっていたのでしょうか。

Nさんは車の運転ができます。 そして、昔、G県に住んでいたことがあります。

突然、思い立って、昔、住んでいた場所に車で行ってしまったようです。「フラフラと危ない運転をする車がある。」との通報があり、その結果、警察に保護された、とのこと。でも、大きな事故を起こさなくて、本当に良かった。

ここで質問です。「Nさんは、どうやってG県から家に帰って来たのでしょうか?」

正解は、なんと、「民生委員さんが迎えに行ってくれた」のです。

まだまだ地縁が残っている地域だったもので、親戚みたいなものという感じで、県外にまで…。明らかに、本来、民生委員さんがやる仕事の範囲を超えていると思います。ちょっと感謝の言葉が見つからなかったですね。

Nさんが家に帰ってきた後、すぐさま市役所、保健師、民生委員、障害者相談センター、病院などの支援関係者で話し合い、「入院しましょう。」ということになり、本人にも説明して、状態が落ち着くまでしばらく入院することになりました。

申立 ~ 多額の借金判明

本人の入院中に支援関係者で再度の話し合いを行い、「Nさんにも成年後見人が必要ですよね。」ということになりました。

本人にもなるべくわかりやすく制度の説明をしたうえで、了承をしてもらい、申立の手続きを進めることにしました。

事が起きる時は、いろいろな事が立て続けに起きるものです。本人の入院中に、父が亡くなってしまいました。なおさら、Nさんの今後の生活のために、後見人が必要な状況となってしまいました。

そして、申立の準備を進めて行くに連れて判明した衝撃の事実。

なんと、亡父には多額の借金があったのです! その総額、なんと1千万円!!

父は入院前にすでに認知症がかなり進行しており、明らかに不要と思われる「監視カメラ」「サーバー」「高額パソコン」「多機能コピー機」「ユニットバス」「高級羽毛布団」「健康食品」など、実に様々な商品を契約・購入していました。

筋の良くない業者に、目を付けられてしまっていたのでしょう。支払い能力の限度は、とっくに超えていたにも関わらず、次々と高額な契約を繰り返し、作ってしまった借金の総額は約1千万円。それが、子であるNさんに降りかかってしまう事態になっていたのです。

後日談

実は、Nさんは、私が公務員を辞めて独立してから、正式に成年後見人(類型としては保佐)を担うことになった、1人目の方です。

家庭裁判所に保佐申立をする直前に、「私が候補者になってもいいですか?」とご本人に確認したら、「ぜひ、お願いします。」と言っていただきました。

いや、これは本当に嬉しかったですよ。「自分のやりたいこと」=後見が必要な方との信頼関係を築いて本人のために必要な支援をする、この実現に向けて一歩進むことができたのですから。

正式に保佐人となった後、弁護士に相談し、借金問題については「自己破産」という形で手続きを進めました。「法テラス」を通じて、「民事法律扶助」を使い、ご本人の負担をなるべく軽減して、問題の解決を図りました。

「自己破産」とは、債務の返済ができなくなった個人の申立てにより開始される破産手続のことです。

「法テラス」(正式名称:日本司法支援センター)とは、日本国民がどこでも法的なトラブルの解決に必要な情報やサービスの提供を受けられるようにしようという構想のもと、総合法律支援法に基づき、平成18年4月10日に設立された法務省所管の公的な法人のことです。

「民事法律扶助」とは、経済的に余裕のない方などが法的トラブルにあったときに、無料で法律相談を行い(「法律相談援助」)、必要な場合、弁護士・司法書士の費用等の立替え(「代理援助」、「書類作成援助」)を行う制度のことです。

※いずれの説明も、法テラスのホームページより抜粋しましたが、一部要約してあります。

これはNさんの支援をしなければ、知り得なかった、大切な知識です。

結び

今、Nさんは、精神科、歯科、皮膚科、泌尿科といろいろなお医者さんにかかりながらも、市営住宅で落ち着いて生活されています。

ちょっと心配なのが、食生活。自制することができないので、何度注意をしても好きなものばかり食べてしまい、栄養が偏り、体重が増えていく一方なのです。

買い物のレシートを見せてもらうと、どうしても菓子パンや揚げ物などが多いのです。「このままだと糖尿病になっちゃって、医者に行く回数とお薬の量が増えて、好きなものを食べられなくなるよ。」とお話しても、なかなか伝わらないんですよねぇ。

今後の生活については、訪問看護ヘルパーさんなどいろいろな人と協力しながら、症状が悪化する前に定期的な受診は継続しつつ、なるべく健康を維持して暮らせるようにサポートしていきたい、と考えています。

5月の新規記事は、5/6(土)と5/20(土)の予定です。

今回も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました~。

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