私が、成年後見を始めてからもうすぐ丸2年が経ちます。
最近は「成年後見制度について教えて~。」と、勉強会の講師を依頼されるようになりました。講師役なんて、独立直後は考えてもいませんでした。「行動することで思わぬ可能性が広がるもんだな~。」と感じつつ、お声がけいただいたことに感謝しながら、私の知っていることをお伝えしています。
さて今回は、私が講師役をした勉強会の時に、参加者の方から質問された「後見人って、どうやって決まるの?」について、お話しようと思います。
後見人の候補者
家庭裁判所に後見等の開始を申し立てる書式を「後見開始等申立書」と言います。
この書式の3ページ目に「成年後見人等候補者」という欄があります。
その中に選択肢が3つあり、①家庭裁判所に一任、②申立人、③申立人以外の者、から1つを選択します。
①家庭裁判所に一任
まず、「①家庭裁判所に一任」にチェックを入れる場合は、文字どおり「候補者は決まっていませんので、家庭裁判所にお任せします。」というケースです。
私が市役所職員時代に、成年後見市長申立の書類を作っていた時は、100%ここにチェックが入っていましたね。
家庭裁判所に一任するメリットは、候補者を探さなくてもよいことです。
逆に、デメリットは、候補者が決まるまでに、とても時間がかかってしまうことです。
候補者の選定を一任された家庭裁判所は、弁護士会、司法書士会、社会福祉士会の組織(成年後見の三士会と呼ばれることがあります)等に対して「こういう方が後見を必要としているので、どなたか適任者はいませんか?」と照会します。照会を受けた組織は、所属会員にさらに照会をかけます。このやり取りにどうしても時間がかかってしまうんですね。
適任者がすぐに見つかればよいのですが、後見を必要としている人(需要)に対して、後見のなり手(供給)が少ないという現実もあり、複雑な問題を抱えている難しいケースの方の場合は、特に見つかりにくかったりします。
最近では、地域の社会福祉協議会等の法人が「法人後見」として担うケースが、徐々に増えているようです。法人後見とは、個人として後見をするのではなく、法人(組織)として後見をする形です。
成年後見人の割合は、親族が約2割(19.8%)、残りの約8割(80.2%)は親族以外が担っています。
親族以外の約8割の内訳は、多い順に、司法書士37.7%、弁護士25.9%、社会福祉士18.1%、社会福祉協議会4.5%となっています。
※最高裁判所 成年後見関係事件の概況(令和3年1月~12月)
「法人後見」のメリットは、組織として持つ知識や経験を共有できることです。組織として対応できるため、担当していた方の都合が悪い時などは、別の担当者が代打で対応できたりすることもメリットでしょう。
デメリットは、担当者が別の人に変わってしまう可能性があることでしょうか。利用者側からすれば、「相性の良い担当者さんが、ずっと担当していて欲しい。」という気持ちは当然あるのででしょうが、組織の一員である以上、異動等により担当が変わることもあり得ます。
②申立人
「②申立人」にチェックを入れる場合は、後見が必要な方の家族が申立人であると同時に、後見人の候補者となるケースです。
前出の「成年後見関係事件の概況」でもわかるとおり、親族の方が成年後見人等を行っているのは全体の約2割です。
そもそも「家族が大変になって自分では支援ができないので、他の人に後見をお願いしよう。」というケースが多いと思われます。「②申立人」にチェックが入るということは「申立をして、さらに後見人もする。」という意味ですので、そんなパワフルな方は少ないのでしょう。
私が関係した範囲でも、②の申立人にチェックを入ったことは、今までないですね。
③申立人以外の者
「③申立人以外の者」にチェックを入れる場合は、すでに候補者が決まっているケースです。
家庭裁判所が候補者を探さなくてもよいわけですから、その分、手続きが早く進むという点が最大のメリットでしょう。
申立人以外の親族であったり、信頼できる知り合いであったり、お世話になったことのある専門家の方であったり、さまざまな方が候補になり得ます。
ただし、注意が必要なのは、「最終的に後見人等を決定するのは、家庭裁判所の判断による。」ということです。例えば、候補者がご本人との間に何か問題を抱えていたり、後見人等として適任ではない、と家裁が判断することもあり得ますので、候補者がそのまま後見人等になるとは限らない、ということです。
まとめ
今回は、後見人の候補者について、家庭裁判所に一任する場合を中心にお話してみました。
候補者を自分で探さなくてよい反面、候補者が見つかるまでにとても時間がかかることが多い、と言えるでしょう。
すでに候補者が決まっている場合は、比較的早く手続きが進むメリットがあります。
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