む題11

出船型

(読み)でふねがた

(意味)船首を海側に向けること

私の地元は、船の運輸で栄えていた時期がありまして。

海運ではなく、川運ですね。江戸から明治のころまででしょうか。

今となっては、そんな面影はないのですが。

歴史に詳しいマニアックな人が、そのわずかな痕跡を知る程度です。

普段は、そんなことまったく気づかずに、生活しています。

そんな歴史もあってか、お酒の席で、とある翁から「出船型」について聞いた記憶が。

船首は、次の出発時に出やすいように考えて、着岸させておく。

転じて、自分の履き物、靴のつま先は外に向けておくと良い、という意味合い。

他人の履き物も、玄関やトイレなどで向きを揃えて出やすいように、という心配り。

社会人として、次のことを考えてあらかじめ準備しておくことの重要性、そして、

他人に対して、さりげない気遣いができることが大切だよ、ということを学びました。

私も「向きが整っていると、気持ちが良いな」と感じるので、誰も見ていない時は、ついつい

他人のスリッパであっても、揃えて「出船型」にしてしまうクセがついちゃいました。

ただし、レアケースですが「消防や救急などの人の靴は揃えないで」という話も聞いたことが

あります。なぜなら「プロは自分で出やすい形にして覚えているから」だそうです。

他人に向きを変えられてしまうと、小さな親切・余計なお世話、になってしまうのですね。

また、料亭で下足番(お客様の靴を収納する係の人)がいる時は、入船型がマナーだとか。

なぜなら、下足番の人のお仕事をとる行為になるから、だそうです。

(でも下足番の方がいる料亭なんて、そんなに行く機会はないよ、って気もしますが。)

まぁ、そもそも「出船型」の考え方は、知らなくても普段の生活ではまったく困りません。

でも、知っているだけで、人間の営みの深さと言うか、趣と言うか、知恵と言うか、

そういうものを感じることができます。

日本に生まれ育って、そういう機微に思いを致すことができて、幸せだな~と思います。

4月、新たな船出、皆それぞれが、それぞれの目的地へ、出港~。

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