成年後見制度とは?② ~成年後見の類型、なれる人・なれない人等~

成年後見制度

今回は、成年後見の類型等について、お話します。

「類型って、なに?」「類型って、どうやって決まるの?」「後見人って、誰でもなれるの?」「後見人が決まれば、何でもかんでも、やってもらえるんでしょ?」等の疑問について、わかりやすくお答えしたいと思います。

もしも、誤解や勘違いされていることがあれば、ぜひ正しく知っておいてもらえると、嬉しいです。

成年後見の類型

前回の記事でも取り上げた「認知症に関する世論調査」の続きです。「本人の判断能力の程度により「後見」「保佐」「補助」の3類型がある」ということを知っている方は15.1%とのことです。約7人に1人の割合ですね。

では、成年後見の3つの類型とは、なんでしょうか?説明は、次のとおりです。

後見 こうけん … 判断能力が全くない人に適用される、3類型で最も重いものです。例えば、寝たきりであったり、先天的な重度知的障害をお持ちの方等は、後見になります。

保佐 ほさ … 判断能力が相当程度低下した人に適用される、3類型で中間にあたるものです。後見ほど重くはない、でも、補助ほど軽くはない、中間の類型です。

補助 ほじょ … 判断能力がある程度低下した人に適用される、3類型で最も軽いものです。日常生活では特に問題ない場合が多いかもしれませんが、医学的に判断能力の低下が認められる方です。難しい契約をする時に、本人の理解不足により不利益な選択をしてしまう恐れ等があるため、支援が必要な方です。

これら3つの類型、どうやって判断するのでしょうか?

実は、「医師の診断書」によって見立てが決まります。成年後見制度用の診断書の様式があり、脳神経外科や精神科等の「ご本人の判断力について、医学的に診断できる人」から作成してもらいます。作成料は、約5,000円程度が必要ですが、医療機関によって金額が異なりますので、注意が必要です。

参考:診断書(成年後見制度用)

診断書1ページ目の下半分に「3 判断能力についての意見」という欄があります。ここがポイントです

□ 契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することができる。

ここにチェック✔が入っている場合、医学的には成年後見は必要ない、という診断になります。

□ 支援を受けなければ,契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することが難しい場合がある。

ここにチェック✔が入っている場合、類型の見立ては「補助」になります。

支援を受けなければ,契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することができない。

ここにチェック✔が入っている場合、類型の見立ては「保佐」になります。

支援を受けても,契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することができない。

ここにチェック✔が入っている場合、類型の見立ては「後見」になります。

ちょっと注意が必要なのは、医師の診断書によって決まるのは、あくまで類型の見立てである、ということです。最終的にどの類型になるかは、家庭裁判所が決定することになります。

当ブログでは、今後「成年後見人」「保佐人」「補助人」の全てをひっくるめて「後見人等」と書くことにします。

後見人等に、なれる人

実は、後見人等には、基本的に誰でもなることができます。特別な資格等は、必要ありません。

よっしゃ、じゃあ、 後見王に おれはなる! (冗談です 笑)

(出典)ワンピース

もちろん、本人の親族が後見人等になることもあります。親族が後見人等になる割合は、全体の19.7% 約2割です。

親族に適任者がいない場合の、残りの約8割のケースでは、弁護士・司法書士・社会福祉士等の専門家が、後見人等になります。

専門家が後見人等になる場合の職種として最も多いのは、司法書士の37.9% 約4割です。

参考:最高裁判所事務総局家庭局 成年後見関係事件の概況 令和2年1月~12月 8-1成年後見人等と本人との関係について

それぞれの職種で得意分野があります。

法律的な問題(離婚や借金等)を抱えている場合は弁護士さん、

登記が関係する問題(土地や家屋の遺産相続等)を抱えている場合は司法書士さん、

身上監護(身の回りのこと、介護サービス等)が必要な場合は社会福祉士さん、

のように、本人が抱えている問題によって選任される職種が検討されます。

後見人等に、なれない人

先ほど「基本的には誰でも後見人等になれる。」とお話しましたが、次の欠格事由に該当する場合は、後見人等には、なれません。

未成年者 … 18才未満の人は、なれません。

後見人等を解任されたことがある者 … 家庭裁判所への報告義務を怠ったり「後見人等として不適格」と判断されると、解任される場合があります。

破産者 … 後見人等は「他人の大切な財産を預かる立場」です。破産したことがある人に、後見人等はお願いできません。

被後見人に対して訴訟を起こした者、その配偶者・直系血族 … 財産を預ける人と預かる人が、お金のトラブルを抱えている当事者なら、これもちょっとお任せできません。

行方の知れない者 … さすがにどこにいるかわからない人には、後見人等はお願いできませんね 笑。

以上の5つの欠格事由に該当しない限りは、基本的に誰でも後見人等になることができます。

後見人等が、できること

ごくたま~に、「後見人等が決まれば、何でもかんでも、やってくれるんでしょ?」と誤解される時があります。でも後見人等は、あくまで、ご本人の法的な代理人であって、便利屋さんではありませんので、ご注意ください。

○ できること → 「金銭管理」や「契約ごとの代理」ができます。できることについて具体的に述べると…

福祉サービス・介護の手続や契約のお手伝い

保険料や税金の支払いやお金の出し入れのお手伝い

よくわからずにしてしまった契約の取り消し

定期的な訪問や状況の確認、食費等の必要な生活費のお渡し

入院や施設への入所の手続のお手伝い

書類の確認や施設等への改善の申し入れ

これらが、後見人等としてできることです。

後見人等が、できないこと

×できないこと → 基本的に「金銭管理や契約ごと以外のこと」は、後見人等は、行いません。

後見人等ができないことについては、親族の方が行うか、または、適正な有料サービスを利用することになります。

食事をつくる・掃除をする等の家事 → ヘルパーさんまたは代行サービス等のお仕事です。

ティッシュ等の日用品の買いものを代わりにする → 親族または代行サービス等にお願いします。

手術をする・しないを決める → 親族が行います。

実際の介護をする → 介護サービスが行います。

毎日のように来てもらったり、話し相手になってもらう → 話し相手ボランティアまたは施設の職員さん等にお願いします。

後見人等が「できること・できないこと」をきちんと把握していないと、後になって「こんなハズではなかった…。」ということになってしまうかも知れません。知っておくって、大事なことなんです。

まとめ

成年後見は、医師の診断書に基づき、本人の判断能力によって「後見」「保佐」「補助」の3つの類型に分かれます。

後見人等になるには、特別な資格等は必要なく、基本的には誰でもなれます。

ただし、未成年者である等、5つの欠格事由に該当する場合は、なれません。

後見人等は、本人に代わって「金銭管理」や「契約ごとの手続き」ができます。

後見人等は、日常的な家事や介護、毎日の話し相手になったりはできません。後見人等ができないことは、ご親族やボランティアが行う、または、適正な有料サービスを利用することになります。

(ちなみに、私が今(2023年1月)現在、就任しているケースは、後見2、保佐6、補助5、計13件です。後見・保佐の方の場合、介護施設やケアハウス等で生活されている方がやはり多いですが、補助の方の場合、訪問看護や福祉サービスを活用しながら、アパートや市営住宅等で1人で生活されている方も結構います。ご本人の能力と収入と希望に応じて、できること・できないことを話し合いながら、支援しています。)

当ブログでは、わかりやすく問題解決につながるコンテンツを目指しておりますので、随時、加筆・修正しております。「ここを詳しく」等のご意見をコメント欄にお寄せくださると嬉しいです。

今回も最後までお読みいただきまして、本当にありがとうございました~。

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